粗利率と採算管理

売上は増えたのに粗利率が下がったら?数字を分けて原因を調べる順番

公開:2026年10月21日 / 執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

売上高は前月より増えたのに、手応えほど利益が残らない。まず確認したいのは売上総利益(粗利)の金額と率です。売上総利益は売上高から、その売上に対応する売上原価を差し引いた金額です。売上総利益率は、売上総利益を売上高で割って求めます。中小企業庁「中小企業の会計 31問31答」問5

粗利率が下がった理由は、販売単価の低下、仕入・製造原価の上昇、売れる商品の組み合わせの変化など、複数あり得ます。売上総利益率の低下だけで値引きが原因と決めないことが大切です。ここでは月次の数字から、確認先を絞る順番を説明します。

売上高だけでなく、粗利額と粗利率を並べる

次は架空の会社の2か月を、同じ税抜基準・同じ会計処理で比べた例です。売上と売上原価は各月に対応させています。

単位:万円

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項目前月当月増減
売上高1,0001,100100
売上原価600715115
売上総利益400385△15
売上総利益率40.0%35.0%△5.0ポイント

売上高は100万円増えましたが、売上原価は115万円増えたため、粗利額は15万円減りました。率だけを見ても、金額だけを見ても全体像はつかめません。例えば当月も粗利率40.0%を維持できていれば、売上高1,100万円に対する粗利額は440万円です。ただし、その55万円の差を一つの原因に帰すことはできません。商品ごとの内訳を調べます。

比較する前に、月次の数字をそろえる

粗利率の変化が実態かどうか、先に会計処理を確認します。販売した月と対応する仕入・外注費を同じ月に計上したか、返品・値引きは反映したか、月末の在庫や仕掛品に大きな計上漏れがないかを見ます。単に仕入代金を支払った月へ原価を入れていると、販売月ごとの採算を誤ります。

商品の仕入販売では、売上原価は期首棚卸高と当期仕入高から期末棚卸高を差し引いて求めるのが基本です。月次で概算の在庫を使う場合は、その精度と翌月の修正を明記してください。決算日時点の数量と評価は決算日の棚卸の記事で整理しています。中小機構 J-Net21「棚卸資産の評価」

サービス業や製造業では、どの人件費・外注費・製造経費を売上原価に含めるかによって粗利率が変わります。前月と当月で集計範囲を変えていないかも確認します。

商品・取引先・案件へ分ける

全社の粗利率を見た後は、できる範囲で次の三つに分けます。

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見る切り口確認すること
商品・サービス別低い粗利率の商品が増えたか、仕入・製造単価が変わったか
取引先別個別の値引き、運賃負担、特別な条件が増えたか
案件・受注別見積時の原価と実際の工数・外注費が違ったか

同じ商品でも、販売価格が下がれば粗利率は低下します。反対に、販売単価を維持していても仕入単価や外注費が上がれば粗利は減ります。また、高粗利の商品から低粗利の商品へ販売構成が変わると、各商品の粗利率が変わらなくても全社の粗利率は下がります。商品別の売上・原価・数量を同じ期間で並べてください。

中小企業庁の白書は、価格交渉の事前準備として商品・製品別の原価構成を把握することを挙げています。価格の変更を考える前に、どの原価が上がり、どの取引に影響したかを確認することが重要です。中小企業庁「2025年版小規模企業白書」第2部第1章

原因ごとに、次の行動を変える

原因の候補が見えたら、翌月までに確認できる単位で担当と期限を決めます。

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分かったこと次に確認すること
販売単価が下がった値引きの承認条件、取引先別の契約単価、競合状況
仕入・外注単価が上がった仕入先別の単価、見積への反映時期、発注量と条件
低粗利の商品が増えた商品別の売上構成、集客や関連販売への役割、総利益額
案件の実際原価が超過した見積時の工数・材料と実績、追加作業の契約条件
原価の計上月がずれた在庫・仕掛品、未着請求書、前月修正の内容

粗利率の低い商品を、率だけで直ちに止めるとは限りません。売上総利益額、固定費への貢献、他の商品への波及、継続契約の条件も見て判断します。値上げの可否も、原価だけでなく顧客に提供する価値と契約内容を踏まえて検討します。中小機構 J-Net21「価格設定の考え方」

よくある質問

粗利率が高ければ、会社は黒字ですか?

粗利から販売費及び一般管理費を差し引いた結果が営業利益です。粗利率が高くても、家賃、人件費、広告費などを賄えなければ営業赤字になります。次は損益分岐点売上高の記事で必要な売上の目安を確認できます。

売上高が増えたのに粗利額が減ることはありますか?

あります。架空例では売上高が100万円増え、売上原価が115万円増えたため、粗利額は15万円減っています。商品別の販売単価・数量・原価と、計上月のずれを確認します。

前年同月と比べるだけで十分ですか?

季節性の把握には役立ちますが、価格改定、商品構成、取引先、原価の集計方法が変われば、その差も説明する必要があります。予算を作っている場合は予実差異の見方も併せて確認してください。

粗利率を、次の月の判断につなげる

毎月見る数字は、売上高、売上原価、粗利額、粗利率から始められます。大きく変わったところだけ商品・取引先・案件へ下り、原因と次の確認日を決めます。会社の数字を毎月どう見る?

岡田健志公認会計士・税理士事務所では、月次試算表と販売・原価データをつなぎ、粗利の変化を経営判断に使える形へ整理する支援をご案内します。ご相談の際は、比較したい期間、会計ソフト、商品・案件ごとの売上と原価をどこまで把握できるかをお知らせください。対応範囲と料金は着手前にご案内します。

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執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。資料確認日:2026年10月20日。数値例は架空です。実際の粗利率は、売上・原価・在庫の計上方法をそろえて確認します。

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