月次の予算と実績
月次の予算と実績がずれたら?売上・原価・固定費を分ける確認順
月次の予算と実績を並べ、「営業利益が予算より90万円少ない」と分かっても、それだけでは次の一手を決められません。売上の不足、変動費率の悪化、固定費の増加を分け、どの差が利益に何万円影響したかを確認します。
中小企業庁の会計活用資料は、予算・前年との対比や達成率を変動損益計算書で把握し、差異を検討する方法を示しています。また、全社合計だけで原因が分からないときは、商品や期間まで下りて確認する実例も公開しています。中小企業庁「中小企業の会計」の活かし方/中小企業庁「経営計画策定支援」資料
比較する月と集計方法をそろえる
最初に、予算と実績の対象期間、税抜・税込、売上計上基準、原価の集計範囲をそろえます。まだ仕入・外注費の請求書が届いていない月や、在庫・仕掛品の計上が未了の月は、実績が暫定値であると示します。数字の未入力を経営上の改善と読み違えないためです。法人の月次経理チェックリスト
予算を後から実績の数字へ書き換えると、当初の見込みと何が違ったか追えなくなります。当初予算、実績、必要に応じた今後の見通しを別々に残します。
架空の月次例で、営業利益の差を確認する
次は架空の会社の1か月です。変動費は売上に応じて発生する仕入・外注費等、固定費はこの売上範囲でおおむね一定の費用として分類しています。売上・費用は同じ税抜基準です。
単位:万円
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| 項目 | 予算 | 実績 | 差異(実績-予算) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,000 | 900 | △100 |
| 変動費 | 600 | 585 | △15 |
| 限界利益 | 400 | 315 | △85 |
| 固定費 | 300 | 305 | 5 |
| 営業利益 | 100 | 10 | △90 |
費用の行は金額を正の数で表示しているため、変動費の差異△15万円は「費用が15万円少ない」という意味です。しかし、変動費率は予算の600÷1,000=60.0%から、実績の585÷900=65.0%へ悪化しています。費用の総額だけで「改善した」と判断できない例です。
差異を三つの要因へ分ける
この例の営業利益の未達額90万円は、予算の限界利益率40.0%を基準に、次のように分けられます。
単位:万円
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| 要因 | 営業利益への影響 | 計算 |
|---|---|---|
| 売上高が予算より100万円少ない | △40 | △100×予算限界利益率40.0% |
| 実績売上に対する変動費率が5.0ポイント高い | △45 | 900×△5.0% |
| 固定費が予算より5万円多い | △5 | 300-305 |
| 営業利益の予実差異 | △90 | △40-45-5 |
表から分かるのは金額差の内訳です。売上不足の理由が販売数量か単価か、変動費率の悪化が仕入単価か商品構成かは、まだ分かりません。数字の分解と、原因の確認は別の作業です。
売上・変動費・固定費ごとに資料をたどる
表は横にスクロールできます。
| 差が出た場所 | 確認する資料・質問 |
|---|---|
| 売上高 | 商品・取引先・案件別の数量と単価、予定していた受注の時期、返品・値引き |
| 変動費率 | 仕入・外注の単価、商品の販売構成、案件の実工数、在庫・仕掛品の計上 |
| 固定費 | 人員・賃料・システム契約の変更、一時費用、予算に入れ忘れた支出 |
例えば売上不足が特定の商品に集中していれば、全社に一律の販促策を打つ前に、その商品の需要、納期、価格、営業活動を調べます。変動費率の悪化が特定の案件だけなら、見積原価と実績原価を突き合わせます。
差異が小さい項目を毎月すべて調べると、作業だけが増えます。自社で確認する金額や率の目安を決め、大きい差、同じ方向に続く差、資金予定へ影響する差から調べます。ただし、少額でも請求漏れや誤処理を示す差は別に確認します。
次月の行動と期末の見通しへつなげる
差異の原因が見えたら、①何を変えるか、②担当者、③実行日、④翌月に見る数字を一行で残します。売上の遅れが翌月へずれ込むだけなのか、失注して期末まで戻らないのかでは、見通しが違います。
当初予算は残したまま、実績月までの累計+残る月の見込みで期末の着地を更新します。利益の見込みと、入金・支払の日程も分けて確認します。営業利益が予算どおりでも、売掛金の回収や借入金返済で預金残高は変わります。売掛金の年齢分析/資金繰り表の作り方
よくある質問
売上が予算を下回ったら、直ちに費用を減らすべきですか?
売上不足が一時的か、今後も続くかを確認します。販促や人員を減らすと翌月以降の売上にも影響する場合があります。固定費と変動費、契約上の変更可能時期を分けて検討してください。
前年同月との比較と、予算との比較はどちらが大切ですか?
目的が違います。前年同月は季節性や前年からの変化、予算は当期に計画した行動と結果の差を見ます。どちらも、対象期間と集計基準をそろえて使います。
当初予算が現状に合わなくなったらどうしますか?
当初予算を残し、今後の見込みを別に更新します。そうすれば、計画時の前提がどう変わったかと、現在の着地見込みを両方確認できます。
差異表を、毎月の意思決定に使う
予実差異は、表の空欄を埋める作業ではありません。営業利益の差を売上・変動費率・固定費に分け、担当と次月の確認指標まで決めることで、月次の数字が行動につながります。会社の数字を毎月どう見る?
岡田健志公認会計士・税理士事務所では、月次試算表と販売・原価の資料から、予算・実績・着地見込みを一緒に確認する支援をご案内します。ご相談の際は、現在の予算表、確定している試算表の月、商品・案件別の集計状況をお知らせください。対応範囲と料金は着手前にご案内します。
執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。資料確認日:2026年10月20日。表は架空の会社の例であり、実在する事業の予算・実績ではありません。